コラム

海外拠点管理のあるべき姿とは

連載第4回海外拠点情報システム導入RFP(提案依頼書)

公開日:2014年9月4日

太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社
マネジャー 今井武氏

前回のコラムでは「スムーズな要件定義方法」と題して、「要件定義前の準備」「要件定義の進め方」「要件確定条件」の順に要件を固めていく手順をご紹介しました。

「要件定義前の準備」としては、スムーズなヒアリングをするために「誰に」「何を聞くのか」を分類化し、参加者のグルーピングや役割、また要件定義を実施する際に準備しておくと参考となる資料などを説明しました。
「要件定義の進め方」では、プロジェクトメンバーへのヒアリング方法、現状の業務フロー図の作成方法、課題や要件を整理して新業務フロー図(あるべき姿)をどのように作成するか。そして最後にそれらをRFP(提案依頼書)としてまとめる流れをお話しました。
「要件確定終了条件」では、要件を確定する際に立ちふさがる4つの壁(組織の壁・経験の壁・予算の壁・決断の壁)を「利害関係者」と「経営者」が協力して乗り越えていくことが重要であるという説明をしました。

一連の流れを通じて、スムーズに要件を確認し、まとめる方法を理解していただけたと思います。

今回は、海外拠点の情報システムに関わる要件を満たすために作成するRFP(提案依頼書)の作成ポイントを説明します。

日本本社と海外拠点の要件ギャップ

まず、新しく海外拠点に情報システムを導入する場合に、日本本社と海外拠点の双方からヒアリング時によく聞かれる内容を確認します。

  • (1)日本本社(経営者)の要件
  • ・海外拠点業務の属人化によるブラックボックス状況の解決
    ・海外拠点の事業急拡大に伴う業務プロセスの改善
    ・海外拠点への日本の内部統制規定を適用
    ・現地管理者が適切にデータ参照・承認できる仕組みを構築
    ・連結決算処理おける海外拠点の決算早期化
    ・日本本社から海外拠点情報への直接アクセス
    ・海外と日本の会計制度の違いを決算情報に反映
    ・受注・売上・在庫・粗利・債権回収状況などをリアルタイムに把握
    ・日本本社主導によるシステム運用フロー標準化
    ・品目コードや取引先コードのグローバル統一管理
    ・統一ベンダーによる海外拠点と日本本社両方のサポート

のように、どちらかというと「やるべきこと」があげられます。

これらの要件から、日本本社から海外拠点(現地)の情報や業務の詳細がわからない(見えない)ため、それを把握でき、また日本からコントロールできる仕組みが必要と言えます。

  • (2)海外拠点(現地)の要件
  • ・データの重複・多重入力の回避 ・事務作業の効率化
    ・集計作業の効率化
    ・日本本社へレポート提出するための作成時間の短縮
    ・日本本社から現地へリクエストされる事柄理由の明確化
    ・日本本社で取り組んでいる改善活動や品質対策の情報共有
    ・現地語(英語)でのコミュニケーション
    ・日本本社側から現地へリクエストされる事柄の集約化
    ・現地での決裁権限、予算の拡大
    ・現地スタッフの教育

のように「やりたいこと(やってもらいたいこと)」があげられます。

現地が期待する要件とは、システム導入による事務作業の効率化のほか、日本から要求されているレポートなどを手作業から自動化し、より効率的にしたいということがあげられます。しかし本来、日本から要求されているレポートなどが何の為に必要で、何に使われているのかを知らないため、現地スタッフ自身が率先して効率化を実現しようとする意欲を削いでしまっているのです。そこで「教育」や「コミュニケーション」といった要件も多くなっています。
また、現地では決裁権限や予算枠を多く持っているわけでないので、その都度、本社にお伺いを立てたり、要望を出したりということが必然的に多くなりますが、双方で理解できないと、お互いに「こちらのいうことは聞かずに要望ばかり・・・」といったマイナスイメージを無意識に植え付けてしまい、更にギャップが広がっていきます。

更に、現地スタッフにとっては、赴任してくる日本人は数年で日本に帰ってしまうケースが多いため、緊急の問題に対しては、解決する努力をしたとしても、長期的な問題は後回しになっているように見え、赴任してきた日本人と現地スタッフの間にもギャップが生まれてしまいます。
このように双方の要件が、「やるべきこと」「やりたいこと(やってもらいたいこと)」になっているのは、お互いのことをきちんと理解しようとしないために生まれた食い違いと言えるでしょう。

  • (3)具体的な解決方法
  • ①日本本社の想い(要件)を現地に正確に伝える
    ②現地は日本本社の想い(要件)をしっかり理解し、現地に則した形で実践する
    ③想い(要件)を双方が継続的に共有し改善していく

双方の要件を理解し、実施計画を双方で練り込んだ上で情報システムに落とし込んで共有し改善していきます。

ここではあえて時間軸を設けていませんが、現地赴任担当者の多忙や言語や文化の違いのため、日本に導入するプロジェクトよりも時間や工数がかかります。

よりスムーズにプロジェクトを進行させるために、外部の専門家やコンサルティング会社に協力依頼することも効果的な方法の一つになります。

海外拠点情報システム導入RFP(提案依頼書)サンプル

次に、先のような要件を実現するための設計書としてRFPを作成します。今回は海外拠点に情報システムを導入するRFPサンプルを用意しました。まとめ方や作成手順に関しては第二回RFP(提案依頼書)作成の勘所、第三回スムーズな要件定義方法を参考にしてください。

□はじめに
弊社は、防火器具の製造及び販売をする専門メーカーです。最近では日本国内のみならず、海外からの需要も多くなり、アジアを中心に海外進出をしております。本年度の中期経営計画の策定に伴い、主要国の一つ、タイ法人に新情報システムを導入する予定です。
本RFPは貴社を含む複数のソリューションプロバイダーにソリューション提案をいただき、新情報システムの機能面の検討を行うことに加え、全体予算、スケジュール、体制の概要を把握することを目的としています。

  • □会社・組織概要
  • (1)発注者企業名:×××××
  • (2)発注者代表者名:×××××
  • (3)売上高:(本社)××× (タイ法人)×××
  • (4)住所:(本社)××××× (タイ法人)××××××
  • (5)組織構造(タイ法人)
  • 組織構造
  • ・代表者:日本人
  • ・管理部門経理部長:日本人
  • ・営業部長:タイ人(日常会話日本語可)
  • ・エンジニア担当リーダー:タイ人(日常会話日本語不可)

このコラムの著者

今井武氏

太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社
マネジャー

上場一部SIベンダーを経て、現在に至る。
海外進出企業、外資系企業を中心に業務システム導入の企画・立案・実行支援を行う。

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