コラム

海外拠点管理のあるべき姿とは

連載第3回スムーズな要件定義方法

公開日:2014年1月16日

太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社
マネジャー 今井武氏

前回のコラムでは「RFP(提案依頼書)作成の勘所」と題して、「なぜ」「だれが」「どのように」の3つ視点から説明をしました。
「なぜ」は情報システム化の設計書として、後々、プロジェクト遅延や予算オーバーに陥らずに経営計画を具現化するため。
「誰が」は自社が主体性を持って想いを詰め込むことで、結果的に満足度の高い情報システムができる。
「どのように」はPRFの情報が曖昧にならないよう過不足なく、多くのシステムベンダーが理解しやすいRFPを作成する。場合によっては外部支援を仰ぎ、自社の想いを正確に記載することが重要。
という結論でした。
どの項目も後々自分たちのメリットとなるので、「なぜ」「だれが」「どのように」の3つ視点を十分意識してRFPを作成することが、良い提案依頼が出来ると理解していただけたかと思います。

さて、RFPをまとめるためには要件や要望を洗出し、利用者が業務を進める際に情報システムを使って何がしたいのか、何ができなければ困るのかといった内容をまとめる「要件定義」という作業をまず行います。

「要件定義」を実施していく上で、社内外含め多数の利害関係者にヒアリングを行い要件や要望をまとめていくため、会社の規模が大きくなればなるほど利害関係者の人数も増えて、日程や内容のすりあわせなどの調整が非常に難しくなっていきます。
今回のコラムでは、これら「要件定義」の作業をスムーズに進行させるために、必要な準備、実際の進め方とその終了条件について説明していきます。

要件定義前の準備
1.要件の種類を知る

要件定義は「誰に」、「何を聞くのか」によっていくつかの分類があります。これらを捉えておくことで、スムーズなヒアリングが可能になり、また後々のRFPを作成する際に提案依頼の内容が誰から出たものなのかが明確になり、システムベンダーにも提案の強弱が伝わりやすくなります。具体的に以下のような分類になります。

要件定義

要件定義は大きく機能要件と非機能要件の2つに分かれ、機能要件は更に業務要件、ユーザー要件に分けることができます。機能要件とはソフトウェア側に期待すること、非機能要件はハードウェアやインフラ等に期待することと位置づけられます。そして、機能要件をブレイクした業務要件は情報システム導入の目的を示しており、これは「経営者」の要望といえ、もう一つのユーザー要件はまさに「現場の人達」の要望ということになります。業務要件、ユーザー要件をブレイクせずに機能要件と分類することもありますが、ここでは2つに分けて説明をしていきます。

第1回のコラムでもお話しましたが、経営者から見た場合、情報システムは「経営計画」実現のためのツールであり、業務の基本的要件として組み込まれます。

本コラムのテーマである海外拠点への情報システム導入の場合、経営者の要件として、現地への投資対効果および進出・撤退の判断材料などの情報取得が業務要件となります。これらを計る主な指標としては、売上高、期間利益額、売上高利益率、原価管理、予実管理等があげられますが、海外子会社は国内事業部と比べて単純に売上高を重視する傾向があります。それは日本本社では、現地の環境変化を細かく考慮して指標の数値を分析することが難しいためです。しかし、本来、海外進出後の経営判断の材料として、どのような要件が必要かを上げるのであれば、国内にはない指標も必要となることは明白です。予実管理を例に取ると、昨今の円安傾向をタイムリーに予算に反映し、実績金額とより現実的な対比をおこうといった要件が必要になりますが、これは国内でも輸出入などを行っている企業では当然のことです。しかし、海外ではニュースに出てくるような、現地情勢や事件、マーケットの動きや雇用の問題などの影響を大きく受けて、予実に限らず指標数値が瞬時に変わる可能性があるため、海外拠点の経営戦略として重要視している指標と受け取りたいタイミングなども正確に伝える必要があります。

一方、現場から見た場合の情報システムは「運用方法」そのものになり、ユーザー要件として組み込まれます。海外拠点導入の場合は、まずは現地言語、現地通貨の対応が要件となります。例えば、現地政府への報告書は英語が必要だが、日本本社への報告書は日本語にしたい、実際の取引する通貨と報告する通貨は別なので複数通貨を管理しなくてはならないなど、日本国内の機能要件だけでは不足してしまいます。
ただし、ユーザー全員の要望を吸い上げていては、要件はまとまりません。後述の進め方でも記載しますが、各業務のリーダーを決めて、その人を中心にヒアリングするか、各部門の承認権限者と一般職員一名ずつに参加してもらいヒアリングするケースが一般的です。
また、経営者の要望である業務要件との整合性の確認も必要で「やりたいこと」よりも「やらなければならないこと」を優先することが重要になります。

このコラムの著者

今井武氏

太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社
マネジャー

上場一部SIベンダーを経て、現在に至る。
海外進出企業、外資系企業を中心に業務システム導入の企画・立案・実行支援を行う。

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